背景が語ることはなんなのだろうか
『傷物語』で執拗なくらいに背景である建築物がつよく強調されているのはなんでだろうと考えてみるが、その理由は想像もつかない。TVアニメの『物語シリーズ』でも特徴的な建築というのはいくつか出ていたが(石上純也氏の『KAIT工房』,三分一博志氏のフォリー,チュミのラ・ヴィレット公園などなど),『傷物語』においてはそれと比べものにならないレベルで建築の存在が強調される.なにしろ『鉄血編』では,メイン絵は「山梨文化会館」(しかも初期の姿),阿良々木の家は丹下健三氏の自邸になっている(テレビ版では普通の一軒家であった).
『鉄血編』ではこうして建築物をバンと全面的に強調する画づくりがなされていた.
そして,『熱血編』においては,さらに過剰な形で強調される.代々木体育館に東京カテドラル,国立西洋美術館に香川県庁,東京文化会館,,,これでもかと日本のモダニズムを代表する建築群が現れる.しかも,一瞬ではなく代々木体育館は阿良々木と羽川の長回しシーンで地上から,上空から,遠景からとこれでもかというくらい多彩なアングルで表現されている.CGで精巧に再現され,彩度を落とした画質で表される建築たちは何を表現するために現れたのだろうか?
監督の尾石達也氏は『傷物語』は「山梨文化会館」という強烈な空間性を持つ建築に出会えたからこそつくることができたと語っている.ならば,この作品においては「建築」という要素は強い意味を持つのだろう.
アニメでは,背景の表現方法がその作品の雰囲気を表現するのに強い影響力を持つ.たとえば,同じシャフトの『魔法少女 まどか☆マギカ』は日常空間と落差のある「魔女空間」という異空間を設計することで,その作品内世界の特異性を端的に表している.
これについては,http://hukukozy.exblog.jp/22918229/で書いた.
『批評視覚×マンガ』によると,魔女空間の効果は,通常は静止したものとして存在するはずの背景自体も動くことにより,通常のアニメのカットとは異なった異空間をつくり出していると説明している.
このように背景は,作品の雰囲気に強く影響を与える.であるならば,『傷物語』のこうした表現はなんなのだろうか.とても強い存在感を持った建築のCGで構成される2.5次元の世界を動き回る2次元のキャラクター.ここにこの作品の表現の特徴と,この作品で建築が果たした役割を考えてみたい.
エピソードとのバトルの時の阿良々木君の覚醒シーンのスピード感がやばすぎて鳥肌立った.溜めにためたからこそなのかな
by foolproof-koji
| 2016-09-07 20:14
| 映画録